Lahの部屋

落書き帳です。見たい人は見てください。

哲学

言語活動としての倫理的判断

倫理学の書籍を読んでいると、どうも、「倫理」というものが特別視されすぎているという印象を受ける。倫理的判断は何ら特別な哲学的判断なのではなく、普通の言語活動の一環だと思っている。そういう視点からメタ倫理学的な考え事を書いていきたい。メタ倫…

トランスエイジからトランスジェンダーを考える

最近、トランスエイジという概念が注目を集めている。トランスエイジとは、身体の年齢(戸籍上の年齢)と自認する年齢が異なる状態のことだ。トランスジェンダーが比較的世間から受け入れられつつあるのに対して、トランスエイジ概念はかなり批判を浴びてい…

思考の切実さ

自分は頭が悪くなったなあと思う。 大学生のときは物事をもっと精緻に捉えていたし、起きているときは常に考え事をする習慣があった。社会人になってそれは明らかに失われてきている。内省力ないし思考力は僕が矜持をもっているところでもあったから、少し悲…

Nobles Obligeと偶然性

Nobles Obligeというのは素敵な倫理だなあと思う。これは端的にいえば、強者が弱者に施すべきだという原理だ。メリトクラシーの荒波に揉まれる今日この頃、このNobles Obligeの倫理をより原理から考えていきたい。 僕がNobles Obligeを支持するのは、偶然性…

自由意志って何?

自由意志とは、人間が自発的に行為できる能力のことだ。自由意志が存在するのか否かという問題は、人に行為責任を負わせるときの合理性を支えるからというのもあって、重要な哲学的問題のひとつとされている。 この掴みどころのない概念について、今のところ…

決定論とその周辺の話

決定論まわりの議論についての今の見解をメモとして残したいなと思って書いた。自分の中でだいたい結論は出ているものの、他者に説明するときに上手く言葉が出てこなくて困ることが多いからだ。 決定論の主張 実証学的プラグマティズム 出来事の記録 もっと…

偶然性の倫理

我々を構成する要素に対して我々の多くは愛着を持っている。他の人が持っているそれらよりも、自分が持っているそれらを優位に立てようとするときすらある。しかし、これは奇妙なことではないか。エッセンスとしては既出の思想だと思うけれど、以前に考えた…

言葉の正しさと準安定

「姑息」という言葉は「その場しのぎ」という意味をもつのだということを、最近になって初めて知った。狡猾・陰湿であることを示す語として日常的にはおおかた通っているものの、辞書によると前者の語義のほうが「正しい」らしいのだ。私個人は日本語の語義…

もう一段階の物心

幼いときに描いた絵のことを思い出していた。 お弁当のことを想いながらぐちゃついた赤い線を引き、最近見た乗り物のことを考えながら紫のクレヨンを走らせた。幼児は手がうまく動かないから、とかそういうのではない。僕はそれらを満足に表現したのだ。単な…

超越論的「解明」の気持ち

超越論的現象学において、「解明された」という言い回しに違和感を覚えることがよくある。現象学用語や特別な名辞を用いて出来事を記述したときに、しばしばこの言い方がされる。まあそんなもんだろうと場当たり的に済ませていたが、常にもやもやしていた。…

原構造という不可解なもの

最近フッサール現象学の書籍を読んでいるんだけど、そこで「原構造」という概念に違和感を覚えた。それは超越論的還元をしていく段階で、ノエシスに「あらかじめ」仕込まれている地平のようなもの。我々が把持や現印象からノエマとしての時間をスムーズに構…

記述することのジレンマ

今の自分の考え方の記述をしようと思ったことが何度もある。何年か経ってから読み返すことで、自分の思考方法がどのように変化したかを確認して楽しむためにだ。しかし僕の経験上、この試みはなかなか深いレベルでは成功しない。そして近頃、そういう試みは…

奇妙な因果性の世界

はじめに 因果の曖昧さ 出来事の必要十分性 もっと低次の因果 否定的原因の是非 因果の条件 はじめに 私は、因果性は不思議で不完全な概念だ、と常に感じている。「因果性」という言葉は一般的ではないが、ようするに「Aが原因となってBとなる」「Aであるか…